北朝鮮・核搭載ミサイルの衝撃(上)米国も認めた「現実の脅威」

平井久志
執筆者:平井久志 2016年9月21日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 北米 朝鮮半島 日本

 北朝鮮は9月9日午前9時(日本時間同9時半)、北朝鮮北東部の咸鏡北道豊渓里の核実験場で5回目の核実験を行った。同国の「核兵器研究所」は約4時間後に「核弾頭の爆発実験が成功裏に行われた」と声明を発表した。韓国国防省の推定では、爆発規模はTNT火薬で10~12キロトンとみられ、これまでで最大であった。

金正恩党委員長の3月指示を忠実に実践

 別表にあるように北朝鮮はこれまで過去4回の核実験は3、4年の間隔を置いて実施してきた。核技術の進展にはそれなりに時間が必要であるためともいえる。北朝鮮は今年1月の核実験を「水爆」と主張した。しかし、北朝鮮が行ったのは「ブースト型原爆」といわれる強化型原爆の実験という見方が有力だ。それも6キロトンという爆発規模を考えれば、「ブースト型爆弾」として完全な成功とはいえないとみられる。
 北朝鮮が1月に核実験をやったので、ミサイル発射は続けても、核実験はないのではないかという見方もあった。北朝鮮のこれまでのやり方を考えれば、次回の核実験は「水爆」よりもさらに進化したものでなければならないと思われた。本当の「水爆」なら、あまりに爆発規模が大きく豊渓里の実験場では無理という見方も多い。あり得るとすれば「ブースト型爆弾」の爆発をより効率的なものにするものではないかという見方が多かった。
 しかし、北朝鮮は「核弾頭の爆発試験」という目的で今回の核実験を行った。爆発規模としては10~12キロトンと第4回核実験の6キロトンの倍近い爆発規模となっているが、それを強調せず、「核弾頭」に焦点を置いた発表をした。爆発の威力を拡大し、それを誇張して発表するというこれまでの流れとは異なった発表だった。
 北朝鮮メディアは3月15日に金正恩(キム・ジョンウン)氏が「弾道ロケットの大気圏再進入環境シミュレーション」を現地指導したと報じた。金正恩氏はここで「核攻撃能力の信頼性をより高めるために、早いうちに核弾頭の爆発試験と核弾頭装着可能な数種類の弾道ロケットの試射を断行する」とし、「当該部門ではこのための事前準備を抜かりなくすること」を指示した。
 北朝鮮はこれ以降、金正恩氏の指示に従い、300ミリ多連装砲、スカッド、ノドン、ムスダン、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など各種のミサイル発射実験を続けた。しかし、核実験はしなかった。今回、金正恩氏の指示で最後に残っていた「核弾頭の爆発試験」を行ったわけだ。北朝鮮は金正恩党委員長の指示を実に忠実に実践したわけである。われわれは、金正恩党委員長のこの発言をもっと注視すべきであった。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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