北朝鮮の「肩すかし戦術」(上)年内に「衛星発射」という「挑発」も

平井久志
執筆者:平井久志 2016年10月17日
カテゴリ: 外交・安全保障 国際
エリア: 北米 朝鮮半島 日本

 韓国などでは、北朝鮮が党創建記念日である10月10日前後に核実験や、ミサイル発射などの挑発行動に出るのではという予想が出たが、北朝鮮はこうした軍事的な挑発行動を取らない「肩すかし戦術」を取った。今年は党創建71周年と、5年、10年という区切りの年でないこともあり、軍事パレードなど大規模行事もない極めて控え目な党創建記念日であった。だが、それは北朝鮮が挑発行為をやめたということではない。

金正恩氏の錦繍山太陽宮殿訪問もなし

 党創建記念日に金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長、黄炳瑞(ファン・ビョンソ)軍総政治局長、朴奉珠(パク・ポンジュ)首相、崔龍海(チェ・リョンヘ)党副委員長など党政治局常務委員をはじめとする党、国家、軍の幹部が金日成(キム・イルソン)主席や金正日(キム・ジョンイル)総書記の遺体が安置された錦繍山太陽宮殿を訪問したという報道はあったが、金正恩(キム・ジョンウン)党委員長が訪問したという報道はなかった。金正恩党委員長は9月9日の建国記念日にも錦繍山太陽宮殿を訪問していない。金日成主席、金正日総書記の威光を借りながら権力基盤を固めてきた金正恩党書記がなぜ続けて錦繍山太陽宮殿を訪問しなかったのか気になるところである。区切りの年でないこともあり、党創建記念日の中央報告大会の報道もなかった。
 北朝鮮は、今年に入り核実験やミサイル発射など挑発的な行為を続けて来たが、党創建記念日に米韓両国などが予測した挑発行為に出なかった背景に、どのような思惑があるのだろうか。
 党機関紙「労働新聞」は9月22日に金正恩党委員長が第5回核実験に寄与した関係者と記念写真を撮ったと報じた。金正恩党委員長は3月15日報道の弾道ロケットの大気圏再進入環境シミュレーションでの現地指導で「核攻撃能力の信頼性をより高めるために、早いうちに核弾頭の爆発試験と核弾頭装着可能な数種類の弾道ロケットの試射を断行する」と述べた。北朝鮮は今年に入り20発以上のミサイル発射を繰り返し、9月9日の「核弾頭の爆発実験」を行ったことで、3月15日に報道された「最高指導者の指示」はすべて行った。核実験関係者との記念撮影はその仕上げ行事だったといえる。金正恩党委員長は、この写真撮影で、今年の核・ミサイル開発活動に一区切りを付けた感じがある。しかし、それは挑発行為をやめるという意味ではなさそうだ。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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