昭和末期に日本が経験したバブル時代からほぼ30年が経ち、改めてその時代への関心が高まっている。特に昨年相次いで刊行された國重惇史『住友銀行秘史』(講談社)と、日本経済新聞記者として当時を深く取材した著者による本書はバブル期の生々しい実態を伝える貴重な証言である。
本書はバブルの歴史を胎動、膨張、狂乱、清算の4期に分けて、それぞれの時代に活動ないし暗躍した人物に焦点を当てることで、その時代の側面を映し出す手法になっている。そこで披露されるエピソードは経済記者であった著者の真骨頂であり、渾身の筆致で描かれる知られざる裏話は臨場感にあふれている。たとえばこの時代を象徴する人物の1人、大阪の謎めいた相場師・尾上縫に日本興業銀行が貸し込んだことは周知だが、尾上の破産管財人となった弁護士の滝井繁雄が訴訟で興銀などの貸付の不当性を示し、一定額を回収して弁済に充てた話(後に滝井は最高裁判事としてグレーゾーン金利規制判決を行った)は、問題の本質が尾上ではなく当時の金融機関の無軌道ぶりにあったことを印象づける。
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