シリーズ:中国「見そこない」の歴史(4)桑原武夫の場合

執筆者:樋泉克夫 2018年6月7日
エリア: アジア
建国当初によく用いられた政治工作の一種で、国民に思想、政治的立場を社会に約束するため、”自発的”に署名させた。①反革命分子の鎮圧・密告に協力し、「悪い人」を匿わない。②デマを信じず、デマの元凶を発見し直ちに政府に報告する。③来客があったら直ちに報告する。無戸籍者を無くし、互いに監視する。④防空工作を積極展開する、といった「公約」が記されている。

 

桑原武夫『中国の演劇』『四川紀行』(『世界紀行文学全集』修道社 1971年)『ソ連・中国の旅』(岩波書店 1955年/2008年復刻版)

 桑原武夫(明治37~昭和63年=1904年~1988年)は、元京都大学教授(フランス文学・文化研究)で文化勲章受章者。父親の桑原隲蔵は、中国における食人の歴史を実証的に研究したことで知られる京都帝国大学教授で、押しも押されもせぬ“支那学の泰斗”。いわば桑原武夫は、京大文化で純粋培養された知性を引っ提げて戦後の論壇に颯爽と登場し、その“ど真ん中”を闊歩したリベラル派文化人の代表といったところだろう。

カテゴリ: 政治 カルチャー
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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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