地政学の進化:「抑止力」を乗り越えられるのか(4・了)

大国の核も小国の核も、現実の使用は難しいのだ (C)AFP=時事

 

 こうした状況にある現代、核は果たして本当に使える兵器なのでしょうか。それはつまり、核抑止という論理が今でも有効なのかどうか、という疑問でもあります。

「核」は「使える兵器」なのか

 ずっとお話ししてきているように、抑止とは倍返しの能力と意志の掛け算なのですが、少なくとも核を使うという意志がはっきりしないと、実は核抑止は成立しないだろうというのが、非常に素直なロジックなんですね。

 そこで出てくるのがNCND(Neither Confirm Nor Deny=否定も肯定もしない)です。これはアメリカの伝統的政策で、核兵器の配備については肯定も否定もしないという曖昧政策が抑止だったのですが、これは冷戦時代だからこそ言えたことではないのか、と思います。

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執筆者プロフィール
柳澤協二(やなぎさわきょうじ) 国際地政学研究所理事長。1946年東京都生れ。70年東京大学法学部卒業後、防衛庁入庁。長官官房長、防衛研究所所長などを歴任。2004年4月から09年9月まで官房副長官補。
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