教養としてのイギリス貴族入門 (2)

デヴォンシャ公爵家(下)

執筆者:君塚直隆 2023年1月25日
タグ: イギリス
エリア: ヨーロッパ
先々代がチャッツワース(写真=(C)Rob Bendall)事業に注ぎ込んで傾いた家産を、第8代デヴォンシャ公爵スペンサー・キャヴェンデイッシュが株式投資の成功で立て直した
清教徒革命、名誉革命という大動乱を経て、公爵となったデヴォンシャ家。首相を輩出するなど政界で活躍する一方で、経済面で浮沈を繰り返したり、奔放な私生活を送るなど、歴代当主は多士済々だった。『貴族とは何か』(新潮選書)刊行記念スピンオフ企画第2回。

首相に就任した第4代公爵

 公爵となったデヴォンシャ家が所有するチャッツワース・ハウスもロンドンの邸宅(デヴォンシャ・ハウス)も、やがてイギリス社交界の中心地へと位置づけられていった。

 イギリスの王家もハノーヴァー家に代わった18世紀前半に登場したのが、第4代公爵ウィリアム(1720~1764)である。21歳で庶民院議員に当選し、一躍若手政治家の中心的な存在となった彼は、父から公爵を引き継いだ翌年、1756年になんと首相にまでのぼりつめる。当時36歳での首相就任は史上最年少、現在でも歴代4位の年少記録である。ただし、その年から始まった七年戦争(1756~63年)に関わるイギリス政治の混乱により、政権はわずか7カ月で崩壊してしまう。

カテゴリ: 社会 カルチャー
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
君塚直隆(きみづかなおたか) 関東学院大学国際文化学部教授。1967年東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒業。英国オックスフォード大学セント・アントニーズ・コレッジ留学。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了。博士(史学)。東京大学客員助教授、神奈川県立外語短期大学教授などを経て、関東学院大学国際文化学部教授。専攻はイギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史。著書に『立憲君主制の現在』(新潮選書/2018年サントリー学芸賞受賞)、『ヴィクトリア女王』(中公新書)、『エリザベス女王』(中公新書)、『物語 イギリスの歴史』(中公新書)、『ヨーロッパ近代史』(ちくま新書)、『悪党たちの大英帝国』(新潮選書)、『王室外交物語』(光文社新書)他多数。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top