教養としてのイギリス貴族入門 (10・最終回)

マウントバッテン女性伯爵

執筆者:君塚直隆 2023年3月11日
タグ: イギリス
エリア: ヨーロッパ
初代マウントバッテン伯爵(左)はフィリップ殿下(右上)の叔父であり、その息チャールズ3世(右下)も深く慕う存在だったが
父親はドイツ人だが英王室との縁は深く、海軍軍人として、そして最後のインド総督として優れた功績を残した初代マウントバッテン伯爵。だが非業の死を遂げ、爵位は長女パトリシアに――。【新潮選書『貴族とは何か』刊行記念スピンオフ企画最終回】

 1979年8月27日の朝。アイルランド北西の沿岸部にある小さな港マラグモアで、7人の家族連れが停泊していたボートに乗り込み、海へと出て行った。前の晩から罠を仕掛けておいたロブスターを獲りに行くためだった。午前11時45分頃、突然ボートが爆発した。乗員3人が即死し、1人は翌日亡くなった。同じく海に放り出された3人はけがを負ったものの、命に別状はなかった。助かったうちの1人、それが事件の直後にマウントバッテン女性伯爵(Countess Mountbatten)となったパトリシアである。なぜ悲劇は起こったのか。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
君塚直隆(きみづかなおたか) 関東学院大学国際文化学部教授。1967年東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒業。英国オックスフォード大学セント・アントニーズ・コレッジ留学。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了。博士(史学)。東京大学客員助教授、神奈川県立外語短期大学教授などを経て、関東学院大学国際文化学部教授。専攻はイギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史。著書に『立憲君主制の現在』(新潮選書/2018年サントリー学芸賞受賞)、『ヴィクトリア女王』(中公新書)、『エリザベス女王』(中公新書)、『物語 イギリスの歴史』(中公新書)、『ヨーロッパ近代史』(ちくま新書)、『悪党たちの大英帝国』(新潮選書)、『王室外交物語』(光文社新書)他多数。
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