素麺の季節がやって来た。
なんと素麺は愛おしい食べ物であろうか。世界に麺を名乗るものは数あれど、これほど繊細にして滋味深い麺は他にないと思われる。
素麺に近いとおぼしきは、パスタの種類の一つ、カッペリーニだろう。
初めてカッペリーニを食べたのはニューヨークのとあるイタリアンレストランだった。四十年以上昔のことだ。ニューヨーク在住の知人に連れられて、薄暗い照明の店内で、その皿は運ばれてきた。当時、私はそんな極細のパスタを見たことも食べたこともなかったので驚いた。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン