やっぱり残るは食欲 (13)

天女の白髪

執筆者:阿川佐和子 2023年8月31日
カテゴリ: カルチャー
エリア: アジア
イタリアンにしても洋風にしても美味しく食べられる素麺の底力(画像はイメージです)

 素麺の季節がやって来た。

 なんと素麺は愛おしい食べ物であろうか。世界に麺を名乗るものは数あれど、これほど繊細にして滋味深い麺は他にないと思われる。

 素麺に近いとおぼしきは、パスタの種類の一つ、カッペリーニだろう。

 初めてカッペリーニを食べたのはニューヨークのとあるイタリアンレストランだった。四十年以上昔のことだ。ニューヨーク在住の知人に連れられて、薄暗い照明の店内で、その皿は運ばれてきた。当時、私はそんな極細のパスタを見たことも食べたこともなかったので驚いた。

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執筆者プロフィール
阿川佐和子(あがわさわこ) 1953年東京生まれ。報道番組のキャスターを務めた後に渡米。帰国後、エッセイスト、小説家として活躍。『ああ言えばこう食う』(集英社、檀ふみとの共著)で講談社エッセイ賞、『ウメ子』(小学館)で坪田譲治文学賞、『婚約のあとで』(新潮社)で島清恋愛文学賞を受賞。他に『うからはらから』(新潮社)、『正義のセ』(KADOKAWA)、『聞く力』(文藝春秋)など。
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