※この記事の原文は、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエル急襲が行われる前に配信されています。
[ロイター]サウジはイスラエルとの国交正常化と引き換えに、米国に自国の防衛を義務づける軍事協定を手にする意向を固めており、国家樹立を目指すパレスチナに対してイスラエルが大きく歩み寄らずとも、米国との交渉は停滞させないと3人の消息筋は明かしている。
昨年7月にサウジを訪問したジョー・バイデン米大統領と会談したムハンマド・ビン・サルマーン皇太子の念頭にあったのはNATO型の強固な軍事協定だが、実際にはNATO型の防衛保証には届かないものになるかもしれない。米政府筋は、むしろアジア諸国との協定に近いものになるか、あるいは米議会の承認が得られなければ、米海軍第5艦隊が駐留するバーレーンとの協定に似たものになるだろうと述べた。また、米国がサウジをイスラエル同様に「主要な非NATO同盟国(Major Non-NATO Ally)」に指定する可能性もある。
すべての消息筋が口を揃えるのは、たとえば2019年9月14日にサウジの石油関連施設がミサイル攻撃を受けたような時に必ず米国が保護する保証がなければサウジは合意しないということだ。この時の攻撃の影響で世界の石油市場は動揺し、サウジとアメリカは、サウジの中東におけるライバルであるイランを非難したが、イランは関与を否定した。
イスラエルとの関係正常化の対価として世界最大の石油輸出国に米国が庇護を与えれば、中東情勢は大きく変貌するだろう。長年の敵同士に手を結ばせ、中国の進出が進む中東において再びサウジと米国は結束する。バイデン大統領にとっては、2024年の大統領選に向けて誇示すべき外交上の勝利だ。
だがパレスチナにとっては、こうした動きはイスラエルとの多少の緊張緩和をもたらすものの、国家樹立という宿願から遠ざかることも意味している。過去週十年に結ばれてきた他のアラブ・スラエル間の協定と同様に、パレスチナの核心的要求である国家承認は後回しにされるだろうと、交渉の内情を知る3人の消息筋はそれぞれ語った。
「正常化はイスラエルとサウジの間で行われる。パレスチナが反対しようともサウジが方針を変えることはない。サウジは基本的にはパレスチナの和平交渉を支持しているが、今回はパレスチナよりも自国の利益を優先する」(消息筋の1人)。なお、サウジ政府はメールでの質問に回答しなかった。
「条約未満」
匿名を条件に取材に応じた米政府高官は、まだ未確定要因が多いとしながらも、協議されているのは「相互防衛協定のようなもの、つまり条約未満になるだろう」と語った。……
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