「悪い情報」ほどトップが説明すべきでないか ~「レベル7」の公表に関して

執筆者:原英史 2011年4月13日
タグ: 日本
エリア: アジア

 福島原発事故が、国際原子力事象評価尺度(INES)で「レベル7」にあたるとの暫定評価が12日に公表された。

報道をみると、その後、
・「11日夕刻に官房長官にはほぼ確報があがっていたが、総理に報告してから公表する段取りを踏むため、公表が翌日になった」とか、
・さらに、「実は3月のうちに『レベル7の可能性がある』という情報はあって、官房長官にも報告されていたが、確証ない段階だったので公表していなかった」
といった話が出てきて、問題になっている。
 
少なくとも、「可能性がある」と国民に早く知らせなかったことは、「隠蔽」と言われても仕方ない。
「確証のない段階で深刻なことを言って、無用な混乱を招きたくない」という発想は、日本政府でよく出てくるが、おかしい。確証がなければ、最善ケースと最悪ケースを、幅をもって公表すべきだった。
 
もう一つ、強く違和感があるのは、「レベル7にあたる」という発表を、原子力安全・保安院と原子力安全委員会の共同会見で行ったことだ。
これだけ重大な事柄を、なぜ総理(あるいは少なくとも官房長官)が、国民に向かって説明しないのか。
もちろん、事象がどのレベルにあたるかの判断は専門技術的に行われるべき事柄だが、その結果を踏まえ、国民に対し、「どう受け止めたらよいのか、国民はどう対処したらよいのか」を説明するのは、国のリーダーの仕事ではないか。
 
ところが、「レベル7」の発表直前、12日朝の官房長官会見で、記者から「レベル7との報道があるが」と問われた枝野長官は、「これから原子力安全・保安院と原子力安全委員会で公表するので、そちらで尋ねてほしい」とだけ回答。
発表の後、12日夕方に菅総理が行った会見でも、「レベル7と発表したところです」、「東京電力に対して、今後の見通しを示すよう指示をいたしております」などと、他人事のような発言に終始した。
 
国民にとって「悪い情報」ほど、早く、責任あるトップの口から、しっかりと説明してもらいたいと思う。
 
 
 
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執筆者プロフィール
原英史(はらえいじ) 1966(昭和41)年生まれ。東京大学卒・シカゴ大学大学院修了。経済産業省などを経て2009年「株式会社政策工房」設立。政府の規制改革推進会議委員、国家戦略特区ワーキンググループ座長代理、大阪府・市特別顧問などを務める。著書に『岩盤規制―誰が成長を阻むのか―』、『国家の怠慢』(新潮新書)など。
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