11月のアメリカ大統領選挙で、民主・共和党のいずれでもない「第三の勢力」であるロバート・ケネディ・ジュニアらの動向が注目されている。ジョー・バイデン、ドナルド・トランプという4年前の対決と同じ2人の戦いの結末を決めるのが「第三の勢力」となるかもしれない。
「バイデン急伸」の理由は?
昨年秋から3月半ばまでトランプが一歩リードしていた各種世論調査ではここにきて、バイデンの追い上げが目立っている。3月21日から4月11日の11の世論調査(「もし今大統領選挙に投票したら誰に入れるか」)を平均したリアル・クリア・ポリティクスの数字は、バイデンが45.6%、トランプが45.4%と、統計誤差を考えるまでもなく、並んでいる。
「バイデン急伸」というこの傾向は、当然すぎるほど当然だ。両党の指名候補争いで民主党側がバイデンの「不戦勝」のような状況だったのに対し、共和党側はトランプがニッキー・ヘイリーやロン・デサンティスらと競う実際の選挙運動を行い、大きな注目が集まっていたためだ。
予備選の各州の戦いでトランプは圧倒的に強かった。1月15日のアイオワ党員集会から、3月5日のスーパーチューズデーまで、各州でのトランプの勝利宣言ばかりを全米の国民は聴かされていた。しかし、トランプが夏の共和党大会に参加する代議員の過半数を獲得した3月12日以降、各州での「トランプ勝利」の報道も一気に消えた。
この段階でバイデンがようやく同じ土俵に立った。実際、バイデンがその後、盛り返している。
そもそも今のアメリカは史上まれにみる政治勢力の分断と拮抗状態が続いている。これから秋の本選挙まで、バイデンとトランプが僅差で競い合いながら進んでいくはずだ。
「第三の勢力」という「スポイラー(ぶち壊し屋)」
拮抗状態が続くとすると、わずかな差が決定的に重要になる。バイデンとトランプのいずれも高齢で、健康問題などもその差を生むかもしれないが、今年の場合、民主党でも共和党でもない無党派や第三政党(弱小政党)の動向が注目されている。
ただ、「第三の勢力」が大統領選挙の結果を変えるかもしれないといっても、「第三の勢力」が2大政党の候補に並び立つようなことは考えにくい。
大統領選挙の本選挙は50州と首都ワシントンに割り振った538の選挙人を奪い合う戦いだ。近年悪化する分断(分極化)で、この51の戦いの中で40強は最初からどちらかの党の候補が勝つことがほぼ確実になっている。実質的に民主党支持者と共和党支持者の数が州内で拮抗するのはわずか6、7程度(アリゾナ州、ネバダ州、ジョージア州、ペンシルバニア、ミシガン州、ウィスコンシン州など)しかない。この激戦州での勝利で大統領選挙が決まることになる。
その激戦州で一定程度の得票をトランプ、バイデンのいずれかから奪えば、「第三の勢力」は選挙の雌雄を分ける役割を担うかもしれない。言葉は悪いが、どちらかの足を引っ張る「スポイラー(ぶち壊し屋)」である。
今年の「第三の勢力」は異例の厚み
今年の選挙の場合、「第三の勢力」に厚みがあるのが大きな特徴だ。その中でもやはり代表的な存在は、ケネディ一族でありながら民主党と袂を分かち、無党派として今年の大統領選挙に挑んでいるロバート・ケネディ・ジュニアだろう。
上述の「もし今大統領選挙に投票したら誰に入れるか」という世論調査は「バイデン対トランプ」という二項選択のものが多いが、「第三の勢力」を含めた調査では、バイデンとトランプが40%前半と僅差で並ぶ中、……
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