それでもインドには原発が必要

執筆者:山田剛 2011年3月19日

  東北関東大震災は、戦後最悪の自然災害となりました。犠牲者・被災者の方々には心よりお見舞いを申し上げたいと思います。また、今こそ日本国民は一致団結してこの未曾有の国難を乗り切り、「三度目の奇跡」を起こして欲しいと切に思います。
 
 依然危機的な日本の福島第一原子力発電所の状況に際し、インドでも政府と原子力発電公社(NPCIL)が国内すべての原発について再度安全性の再確認を指示した。インドは1969年に原発の商業運転を開始。現在、計20基、総発電能力4780メガワットの原発(世界第15位)があるが、ロシアの支援で建設が進むクダンクラム原発1、2号基など6基(計4800メガワット)が建設中、さらに8基(6800メガワット)の建設計画が決まっている。高度経済成長を持続するために不可欠な電力の確保を急ぐインド政府は、原発の発電能力を2020年に2万メガワット、2032年には6万3000メガワットに拡大するという壮大な計画を立てており、米国をはじめフランスやロシアなどと相次ぎ民生用原子力協力協定を締結している。
 それだけに今回日本で起きた原発事故は、大きな衝撃を持って受け止められた。特に仏アレバからの資機材導入が決まっているインド西部マハラシュトラ州のジャイタプル原発は、比較的地震の多い地域に建設するため地元を中心に反対運動が起きている。マンモハン・シン首相やアニル・カコドカル前原子力委員会委員長らは「日本とインドの原発は設計が違う」「インドの原発は度重なる災害にも耐えてきた」などとくり返しインドの原発の安全性を強調している。
 実際インドの原発は、死者2万人以上を出した2001年のグジャラート大地震や2004年のインド洋大津波に際してもほとんど被害を出さなかった。後者では南部タミルナドゥ州カルパッカムにあるマドラス原発に津波が到達したとされるが、原子炉は無事に自動停止している。
 今のところ、メディアや知識人の論調はきわめて冷静かつ建設的だ。「条件反射的な原発忌避論は排すべし」「今必要なのは厳格な安全ルール」といった声が多く、ほぼ全員が「インドが経済成長を持続するには原発が必要だ」という論点で一致している。インドと日本ではエネルギー事情が大きく異なるし、福島第一原発の行方はもちろん震災被害の全容も判明しない中、素人の口出しは厳に戒めるべきだが、原子力政策の再構築を迫られる日本にとってもこうした論調は参考にするべきだろう。(山田 剛)
 

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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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