製薬業界は「過剰接待」という日本的慣行から抜け出せるか

磯山友幸
執筆者:磯山友幸 2011年9月6日
エリア: ヨーロッパ 日本

 製薬会社の営業と言えば、「医師を接待して自社の薬をできるだけ多く使ってもらうこと」という業界の“常識”が今、大揺れに揺れている。
 製薬会社の業界団体が、医師に対する接待について2012年4月から規制を強化することを決めたほか、2012年度分から製薬会社が医師のために使った接待費などの金額を開示することにしたためだ。海外での規制強化の流れを受けたものだが、「接待なしでどうやって薬を売れと言うのか」と頭を抱える昔ながらのMR(医薬情報担当者)も少なくない。接待漬けに慣れ親しんできた医師の一部にも根強い不満の声がある。長年続いた「日本的な慣行」を来年度から本当に自粛することができるのか。国民医療費の増加が続く折、巨額の利益供与が明らかになれば、国民の怒りが爆発しかねない問題だけに、今後、注目されそうだ。

高級クラブからゴルフまで

「医師の学会があれば会場設営から、行き帰りの足の手配、夜の接待まで、製薬会社がアレンジするのは常識でした。医師に高額の講演料やコンサルタント料を払うケースもありました」
 大手製薬会社で営業を担当するベテランMRは医師接待の実態について、そう語る。
 会場は高級ホテル。学会が終わった後の立食パーティーは豪華さを競い、2次会は高級クラブへ。翌日はゴルフというのも珍しくなかった。
 製薬会社からすれば、薬を使ってくれる医師こそが「お客様」であり「神様」。医師の無理難題を聞いてこそ、優秀なMRというわけだ。かつては病院が購入した薬代の一定割合をキックバックしていた時代もあるが、それが禁じられて以降、医師への利益供与は様々に形を変えた。
 今年1月、日本製薬工業協会が決めた「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」を見れば、逆説的ではあるが、どこに問題が潜んでいるのか一目瞭然だ。ガイドラインには、研究費、寄附金、学会共催費、講師謝金、原稿執筆料、講演会費、接遇等費用といった項目が並んでいる。いずれも2012年度の金額を2013年度から公開することになった。

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執筆者プロフィール
磯山友幸
磯山友幸 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト。著書に『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)などがある。
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