進む指導部固め

平井久志
執筆者:平井久志 2012年3月7日
カテゴリ: 国際
エリア: 中国・台湾

 北朝鮮の朝鮮労働党中央委政治局は2月18日、党代表者会を4月中旬に開催するとの決定書を採択した。党政治局決定書は、党代表者会開催の目的を「金正日(キム・ジョンイル)同志の聖なる革命的生涯と不滅の革命業績を千年、万代末永く輝かし、敬愛する金正恩(キム・ジョンウン)同志の周りに堅く団結し主体偉業、先軍革命偉業を最後まで完成させるために朝鮮労働党代表者会を4月中旬に開催する」と言明した。
 党代表者会の開催は金正恩氏が公式に登場した2010年9月の第3回党代表者会以来1年7カ月ぶりだが、北朝鮮が金正恩氏をこの代表者会で党総書記に推戴するのは確実とみられる。金正恩後継体制づくりは北朝鮮がよく標榜する「速度戦」で進んでいる。

一気に「党総書記」「国防委員長」へ

競技用の銃弾工場を現地指導した際、試験射撃をする金正恩氏(2月22日、朝鮮中央通信配信)(C)AFP=時事
競技用の銃弾工場を現地指導した際、試験射撃をする金正恩氏(2月22日、朝鮮中央通信配信)(C)AFP=時事

 筆者は本サイトの「『首領制』終焉への道(下)」(1月11日)で、金正恩後継体制確立に向けて2つの選択の可能性があると指摘した。それは4月15日までに党総書記と国防委員長などすべての重要職責に就任する選択と、今年春には国防委員長だけに就任し秋に党代表者会を開催し党総書記に就任するという選択であった。  4月中旬に党代表者会を開催するという今回の決定で、後継者、金正恩氏が4月15日までに党のトップである党総書記と、憲法上の最高職責である国防委員長に一気に就任する可能性が高まった。  党機関紙「労働新聞」は2月29日付の「朝鮮労働党代表者会を高い政治的熱意と輝かしい労力的成果で迎えよう」と題した社説で、党代表者会において「敬愛する金正恩同志の思想と領導を最も真に、最も忠実に奉じて全党と全社会に金正恩同志の唯一的領導体系を確固として打ち立てなければならない」と述べ、金正恩氏が党総書記に推戴されることを強く示唆した。  また、もう1つの焦点は金正恩氏がいつ憲法上の最高職責である国防委員長に就任するかである。金正恩氏は昨年12月30日の党政治局決定で最高司令官に推挙されたが、北朝鮮憲法では最高司令官は国防委員長の兼務職であると規定している(第102条)。厳格には、国防委員長でない人物が最高司令官に就任することは憲法違反である。この違憲状況を解消するためにも金正恩氏は早期に国防委員長に就任しなければならない。  北朝鮮は例年、予算・決算の審議のために3月末から4月初めにかけて最高人民会議を開催する。昨年は3月18日に最高人民会議第12期第4回会議を4月7日に開催すると発表した。今年も4月に最高人民会議を開催するとみられる。国防委員長は国家の職責であり、選出は最高人民会議で行なわれる。今年4月前半に開催される最高人民会議で金正恩氏が国防委員長に就任する可能性が高い。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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