「光明星」落つ 朝鮮半島に迫る核実験危機

平井久志
執筆者:平井久志 2012年4月24日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障

 北朝鮮は4月13日、金日成(キム・イルソン)主席の誕生100周年を祝い、金正日(キム・ジョンイル)総書記の遺訓であり金正恩(キム・ジョンウン)時代の幕開けの「祝砲」である「光明星3号」を打ち上げたが、見事に失敗に終わった。北朝鮮では金正日総書記を意味する「光明星」という名前を付けた「衛星」打ち上げに失敗があってはならないはずだが、北朝鮮当局はあっさりと打ち上げ失敗を認めた。そして、国際社会は「光明星3号」の発射は長距離弾道ミサイルの発射実験であるとし、国連安全保障理事会は議長声明で北朝鮮の「衛星」打ち上げを「強く非難」した。
 北朝鮮も同17日、外務省声明を発表し国連安保理議長声明を非難し「2.29朝米合意にわれわれもこれ以上拘束されないであろう」として2月29日に発表された米朝合意破棄の姿勢を示した。北朝鮮を取り巻く状況は再び2009年4月の「銀河2号」(テポドン2号)発射後の状況に戻った。北朝鮮は09年を再演するように第3回核実験に向かうのだろうか。

「成功」を予想する声もあったが……

 今回の「光明星3号」の打ち上げについては、衛星を軌道に乗せるのに成功するのではないかという見方がかなりあった。北朝鮮は国際社会が長距離弾道ミサイルであるとするロケット「銀河3号」や人工衛星「光明星3号」を外国メディアに公開し、自ら多くの情報を明らかにするなど、成功に自信を持っているように見えた。
 さらに、イランが過去3回も衛星打ち上げに成功しているため、ミサイル技術で交流のある北朝鮮はイランから相当の技術情報を得ているのではとの見方が強かった。
 イランが2009年2月に打ち上げ軌道に乗せることに成功した衛星「オミド(希望)」は重さ27キロで寿命は約2カ月。日本が1970年に打ち上げに成功した人工衛星「おおすみ」の24キロと似た重さだ。
 2011年6月に打ち上げた衛星「ラサド(観測)」は重さ15.3キロで高度260キロの軌道を1日に15回周回するとした。イランはさらに2012年2月に国内の大学で開発された衛星「ナヴィード」を軌道に乗せることに成功したが、これは重さ50キロで、約2カ月の間に地球を945回以上周回し、約200の画像を送信したという。
 北朝鮮の「光明星3号」は重さ100キロで高度500キロの軌道に上げ寿命は2年とされ、イランの衛星より重く、高度も高かった。
 北朝鮮の「西海衛星発射場」(東倉里発射場)の張明進(チャン・ミョンジン)総責任者は「打ち上げロケットの『銀河3号』は全長30メートル、直径2.4メートルで総重量91トン」と述べた。「銀河3号」は3段式ロケットだが、2009年4月に発射した「銀河2号」(テポドン2号ミサイル=推定射程6700キロ以上)の改良型とみられた。第1段ロケットについては弾道ミサイル「ノドン」の推進体を4基たばねたものという見方と、中距離弾道ミサイル「ムスダン」の改良型という見方があった。第2段ロケットは「ノドン」の改良型とみる見方が大半。固体燃料を使った推進体とみられた第3段ロケットが、秒速7.9キロ以上まで加速できるかどうかが衛星を軌道に乗せる鍵とみられた。
 2009年4月の「銀河2号」は79トン程度と推定され、今回は10トン以上重量が増した。長さではほぼ同じだが、「銀河2号」と同3号の違いは直径がやや伸び、ロケットが太くなったことだった。「銀河2号」は第1段ロケットと第2・第3段ロケットとの分離に成功したが、衛星を軌道に上げることには失敗した。これは推進力不足が原因である可能性が高かった。このため「銀河3号」は推進力を増すために、第1段ロケット部分を太くし、より強力なエンジンを搭載し、液体燃料も多く入れたために総重量が増えたのではとみられた。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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