刑事・司法でオウムの全容解明が期待できないのはなぜか

春名幹男
執筆者:春名幹男 2012年6月15日
エリア: 日本

  オウム真理教の高橋克也容疑者(54)が逮捕された。
 「これで事件の全容解明を」という声が高まっているが、このままの態勢では全容解明はほど遠いと言わざるを得ない。昨年末から、警視庁に出頭した平田信容疑者(47)、今月3日相模原市内で発見された菊地直子容疑者(40)、と残っていた特別手配の3人が逮捕され、未解明部分を埋める捜査が行なわれるだろう。この部屋で紹介したNHKの「未解決事件ファイル2-オウム真理教」(5月26、27日の2夜連続で放映)の効果がある程度あったかもしれない。

 しかし、警察が立件し、検察が起訴して公判で有罪判決を得れば、法執行機関(law enforcement)の仕事は終わる。米上院政府活動委員会調査小委で行なったような徹底的調査を日本の国会がやらなかった以上、全容を解明する政府機関は日本にはない。情報機関によるインテリジェンスの収集・分析を徹底的に行なわなかったことが問題なのだ。

 サリン製造のノウハウも、一部で指摘された北朝鮮との関係も、闇に葬られてしまう恐れがある。例えば、地下鉄に残されたサリンのサンプルを分析して、武器として保有してきた諸国のサリンと比較・分析することはこれからでもやれるのではないか。本当にオーストラリアではウラン鉱を調達し、核兵器保有を目指したのか。明の朱元璋をまねて「居抜き」で皇帝に就くことを目標にしたのか、などなど、解明されていないことは多い。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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