谷開来裁判から思い起こす四人組裁判

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2012年8月14日

 世界の注目を集めた谷開来裁判だが、罪状認否と証拠の読み上げまでは行ったが、判決は後日に言い渡されるということで、まだ先になりそうな雲行きである。

裁判の模様を台湾のテレビでながめていたのだが、「谷開来が文革のときの江青にだぶって仕方がない」と話していたベテランの台湾人記者の感想を聞き、なるほどと思った。

そういう風に考えると、温家宝が悲憤を込めて「文革のような悲劇をまた繰り返さないとも限らないんだ!」と先の全人代で叫んだ意味の深さがよく分かるような気がした。

薄熙来がいなければ、谷開来がいかに優秀で権力志向の強い女性だったとしても、法廷に引っ立てられる日が来ることはなかっただろうし、毛沢東がいなければ、気が強い女優志望の革命少女だった江青は、ああした結末には遭わなかっただろう。

同時に、谷開来がいなければ薄熙来もこんなことにはなっていなかっただろうし、それは毛沢東でも同じことで、夫が妻を狂わすのか、妻が夫を狂わすのかは、どちらも正しいと言えるだろう。

ただ、やはり権力を手にした妻の暴走がより大きな悲劇の導火線となることは間違いない。江青の裁判は1980年。あれから30年あまり。中国は、変わったと言えば変わったが、変わっていないと言えば変わっていない。法のしばりを持たない権力の暴走という意味では、文革も薄熙来の事件も根底は同じだからだ。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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