要員退避計画はあった――爆発の連鎖・拡大におびえた東電経営陣

執筆者:塩谷喜雄 2012年9月14日
エリア: 日本
東電は8月6日に事故当時のテレビ会議の映像を限定的に開示した。画像は本社に乗り込んだ菅直人首相(当時)[東京電力提供](c)時事
東電は8月6日に事故当時のテレビ会議の映像を限定的に開示した。画像は本社に乗り込んだ菅直人首相(当時)[東京電力提供](c)時事

 3.11から1年半以上過ぎても、私たちは福島原発事故の「骨格」も「筋道」も、肝心なことは何一つ知らない。  予想を超える大津波が来て、全電源を失い、炉心の核燃料を冷却できず、炉心は溶融落下し、原子炉は次々水素爆発を起こした……。なんてことは事故の骨格でも筋道でも何でもない。過酷事故を招いた当事者たちが、責任逃れのために都合よくつくりあげた「筋書き」でしかない。科学的根拠はゼロで、事実は何ら検証されていない。  あの程度の大津波の襲来は地質学者がちゃんと予想していて、東京電力も経済産業省も熟知していたのに、備えを怠っていただけである。予想外でも想定外でもない。  津波の前に地震の一撃で電源の一部はすでに失われていたことも判明している。電源がなくても働く冷却システムを備えていたのに、それはなぜかまともに機能しなかった。運転員の操作ミスを指摘する調査報告もある。

しつこく、ぶれずに原因の解明を求めよ

 もっともらしく聞こえる「筋書き」は矛盾だらけで、少し検証するとたちまちその嘘が馬脚を現す。真実から国民を遠ざけるために流布されている偽りの筋書きを払拭して、私たち国民がしつこく、ぶれずに、解明を求めるべき事柄は、以下のことである。
 東北地方太平洋沖地震による地震動と津波に襲われた東京電力福島第一原子力発電所では、機器やシステムがいつ、何が原因で、どう壊れ、破損や障害はどのように拡大・進行して、隣接する4基の原発が連続して致命的に損壊するという、世界に全く類例のない「同時多発の過酷事故」にまで至ったのか。
 4つの同時多発事故は、それぞれ独立に起きたのか、連鎖なのか。東電の初期対応は適切で、間違いや手抜かり、ミスはなかったのか。事故を拡大させた原因はどこにあるのか。
 政府、国会、民間の事故調査委員会の報告に加え、第一容疑者が事件を捜査してみせるという奇怪な構図の東電の事故調も含めて、4つの調査報告が公表されているのに、この肝心のポイントはほとんど解明されていない。
 責任回避の言い逃れに終始している東電の報告書を除けば、他の3つの事故調報告はいずれも、巨大事故の断面をいくつか鋭く切り取ってはいる。それが必ずしも核心に迫っていないのには、やむを得ない事情もある。

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執筆者プロフィール
塩谷喜雄 科学ジャーナリスト。1946年生れ。東北大学理学部卒業後、71年日本経済新聞社入社。科学技術部次長などを経て、97年より論説委員。コラム「春秋」「中外時評」などを担当した。2010年9月退社。
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