危機の克服による欧州統合の発展は可能か

渡邊啓貴
執筆者:渡邊啓貴 2012年10月6日
エリア: ヨーロッパ

 9月10日、ドイツ連邦憲法裁判所が欧州安定メカニズム(EMS)合憲の審査結果を発表し、昨年来決定していたEMSが晴れて発足することになった。EMSは、欧州財政安定基金(EFSF)に代わる、各国への融資・資金援助を行なう機関である。この機関の正式の発足には5000億ユーロの基金が当てられるが、ドイツは1900億ユーロ以上の資金をこの機関に投入する予定である。

 このドイツの協力姿勢への転換は、フランス、イタリア、スペインなど「南欧諸国」の圧力による妥協であるが、6月末のEU首脳会議はユーロ危機・財政危機の大きな曲がり角となった。フランスで緊縮財政を強調してメルケル独首相と共同戦線を張ったサルコジ大統領に代わって誕生したオランド大統領は成長戦略を強調した。ここにおいてユーロ危機と財政危機に対する解決策の潮目が大きく変化したのである(2012年7月11日「財政・政治統合への活路を求めるEU」参照)。

 欧州統合は、これまでにも常に危機をきっかけに更なる次の段階に発展してきた。果たして今般のユーロ・財政危機はつぎなる財政統合へのステップとなるだろうか。

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執筆者プロフィール
渡邊啓貴
渡邊啓貴 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1954年生れ。パリ第一大学大学院博士課程修了、パリ高等研究大学院・リヨン高等師範大学校客員教授、シグール研究センター(ジョージ・ワシントン大学)客員研究員、在仏日本大使館広報文化担当公使(2008-10)を経て現在に至る。著書に『ミッテラン時代のフランス』(芦書房)、『フランス現代史』(中公新書)、『ポスト帝国』(駿河台出版社)、『米欧同盟の協調と対立』『ヨーロッパ国際関係史』(ともに有斐閣)『シャルル・ドゴ-ル』(慶應義塾大学出版会)『フランス文化外交戦略に学ぶ』(大修館書店)『現代フランス 「栄光の時代」の終焉 欧州への活路』(岩波書店)など。
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