ブラジルの減速、メキシコの台頭――耐性示す2012年の中南米経済

執筆者:遅野井茂雄 2012年12月19日
エリア: 中南米

 2012年の中南米経済は、GDP比3.1%の成長にとどまった。昨年の4.3%と比べ1.2ポイント、年初の見通しと比べ0.6ポイントの減速である。EU危機と中国の経済減速の影響が、新興経済圏として堅調を誇ってきた中南米地域にじわり及んだ形である。12月11日国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)が速報値として発表した。同速報によれば、2013年は、世界経済が依然として不安要因を抱える中でも、3.8%に回復すると予測している。

 速報では、中南米経済がここ数年の世界経済の危機の中でも耐性力の強さを示した点を強調している。成長軌道を維持し、3年続けて失業率は低下し(6.4%)、実質賃金の上昇をもたらしている。外需が縮小する中でも輸出先の多様化により輸出額は伸び、また健全な財政運営(GDP比30%を切る政府債務比率)を背景にした財政発動による景気刺激策の実施や、貧困層・弱者を対象とした社会政策を通じた内需が成長を牽引していると分析している。外国直接投資(純)は1890億ドルの高水準を維持し、外貨準備高も7230億ドルを超す歴史的水準に積み上げるなど、堅調ぶりは依然続いている。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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