「ポスト・グリーンスパン時代」を手探りするFRB

執筆者:清水功哉 2005年3月号
エリア: 北米

「神様」と称された議長の退任が迫る中、FRBは市場との対話に支障をきたすリスクを抱え始めた。超低金利からの脱却は波乱含み――。

「グリーンスパン議長が圧倒的な存在感を誇ってきたFRBで、地殻変動が起き始めた」――。米国の中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB、略称フェド)の動向を追うフェド・ウオッチャーが身構え始めた。
 きっかけは、金融政策を議論する連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨の公表時期が、昨年十二月十四日のFOMCから前倒しされるようになったことだ。
 議事要旨(通称、ミニッツ)は、FOMCで十二人のメンバー(グリーンスパン議長らFRB本部の理事七人とニューヨーク連銀総裁。これに、毎年入れ替わる四人の地区連銀総裁で構成)が何を話し合っていたのかを、発言者の名前を伏せて明らかにするもの。政策運営の透明性を確保するための手立てと位置づけられている。ただ、従来は次の会合でのFRBの出方を占う材料としては使いにくかった。公表されるのが「次の会合の後」だったからだ。
 今回、公表時期が「次の会合の前」に改められたことで次回会合での政策の出方を占う資料として使いやすくなり、議事要旨への注目度は大幅に上がる。
 議事要旨の「地位向上」は、言い換えれば「グリーンスパン発言の相対化」だ。一応は十二人の多数決となっているものの、FOMCの政策決定の過程では、グリーンスパン氏の影響力が圧倒的に大きいと考えられてきた。フェド・ウオッチャーたちは、議事要旨を読むより、グリーンスパン議長の講演や議会証言を聴く方が重要と受け止めてきたのだ。
 議事要旨早期公表の背後には、議長だけが目立ち過ぎる状況を徐々に改めていこうという深謀遠慮が見え隠れする。それは、グリーンスパン氏が来年一月に理事としての任期が切れるのを機に退任するとの観測が広がっていることと無縁ではない。FRB内で、「ポスト・グリーンスパン時代」への準備が始まったことが窺える。
 退任が近づくにつれて、どうしてもFOMCにおけるグリーンスパン氏の影響力は低下する。マーケット関係者がこれまでのように議長の声ばかり追いかけるようならば、金融政策変更の見通しについて当局と市場に認識ギャップが生まれ、経済やマーケットに混乱が起きかねない。グリーンスパン氏退任後についても同じことがいえる。後任が誰になるにせよ、神様扱いされてきた同氏のような影響力をすぐに確立するのは難しい。FOMCは「集団指導体制」にならざるをえないのだ。

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