ブックハンティング・クラシックス
ブックハンティング・クラシックス(11)

日本の若者たちの写し鏡となる階級社会イギリスの“野郎ども”

執筆者:苅谷剛彦 2005年12月号
カテゴリ: 国際 書評
エリア: ヨーロッパ

『ハマータウンの野郎ども』Learning to Labourポール・E・ウィリス著/熊沢誠・山田潤訳ちくま学芸文庫 1996年刊(単行本は85年刊) ついこの間まで、勉強しすぎだと言われた日本の子どもたちは、最近の国際比較調査によれば、いまでは他の先進国の子どもと比べ、ほとんど勉強しない部類に入る。勉強することに関心を持たず、早くから勉強から「降りてしまう」子どもが増えている傾向を示す調査結果もある。さらにいえば、私の研究でも、勉強から「降りる」ことや基礎学力、さらには自分たちで調べたり発表したりする学習への取り組みが、生まれ育つ家庭環境と関係していることがわかっている。教育の世界で、恵まれた家庭の子どもと、恵まれない子どもとの「二極化」が進行しているのである。 子どもたちばかりか、若者たちも厳しい現実に直面している。正社員ではなく、フリーターや派遣社員などの非正規の職に就く若者たちは、二百十万人以上になるといわれ、仕事にも就かず学校にも行かない「ニート」と呼ばれる若者の数も、五十万人とも六十万人ともいわれる。やりたい仕事が見つからない、自分に本当に合う職業がわからない、といった若者自身の意識の問題もあるにはあるが、ここにも明らかに家庭環境の影響がにじんでいる。恵まれない家庭出身の若者のほうがフリーターや無業者になる可能性が高いのである。

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執筆者プロフィール
苅谷剛彦 英オックスフォード大学教授。1955年東京生れ。米ノースウェスタン大学にて博士号(社会学)取得。同大学客員講師、東京大学大学院教育学研究科教授などを経て現職。『教育の世紀』(弘文堂、サントリー学芸賞)、『教育改革の幻想』(ちくま新書)、『知的複眼思考法』(講談社)など著書多数。
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