【インタビュー】小泉堯史(映画監督) 撮れそうで撮れない 映画でしかできない表現を求めて

執筆者:草生亜紀子 2006年2月号

「書店員が選ぶ第一回本屋大賞」受賞作のミリオンセラー『博士の愛した数式』が映画化された。メガホンをとったのは、助監督として故黒澤明監督に二十八年間師事した小泉堯史氏。小説は、記憶が八十分しかもたない天才数学者と家政婦とその息子、そして博士の義姉が織りなす哀しくも暖かい人間模様でありながら、同時に虚数や素数、友愛数や「オイラーの公式」といった数学をも主人公とする不思議な味わいの物語だ。それを映像にしていく難しさとおもしろさ、そして映画作りの醍醐味とは何かを、小泉監督に聞いた。ヒントは西田幾多郎の言葉――この作品を映画にしようと思ったきっかけは何ですか。小泉 本は、刊行から間もなく書店で手にとって読みました。小説の最後のキャッチボールの場面から、ラストシーンが浮かんだのです。それで、映画にしたいと思いました。――どういうプロセスで活字を映像に「翻訳」するのですか。小泉 まずは創作ノートを作ります。こういうシーンを作りたい、ああいうのもいいというのを、アトランダムに書き連ねていく。たとえば博士には、『春宵十話』の著者である有名な数学者、故岡潔奈良女子大名誉教授の姿が具体的なイメージとして浮かびました。また、博士が暮らす部屋も、小説を読みながら、こんな部屋かなあと想像して、動きを考えながら図面を引いたりするのです。そのうち、人物が頭の中で動き出すと、脚本が書けるようになる。

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