ゑみ子さんの恋バナ

六車由実
執筆者:六車由実 2014年4月4日
エリア: 日本

「娘時代にさ、仲が良かった女友達がいただよ。その子がさ、ひとりじゃつまんないもんだから、私をよく遊びに誘ってきてさ。ゑみちゃん、今日どこそこ行くからさ、あんた仕事終わったら付き合いなってさ。それで私、熱海の洋品屋に勤めてたら。仕事終わってから喫茶店に行ったの」

「いい友達だね」

「うん、それで喫茶店に行くら。男の連中も来てるだよ、喫茶店に。そうすると私の友達がひっかけるの。『あんたっちこっちへ来ない? それじゃなかったら、私らがそっちへ行ってもいい?』ってさ。軟派だったんだよ、その女友達は」

「すごいね」

「さすが熱海はお街だね」

「それで、どうしたの?」

「それで、映画のナイトショーが夜の10時頃から始まるからさ、それまで喫茶店にその男連中といてさ。ナイトショーが始まる時間になるとさ、コーヒー代ぐらいは持っていたんだけど、しっかりした友達だったから、男衆に払わせるの。『私らお金ないから、あんたら払ってよ』って、こうだよ。男衆はしょうがないから払ってくれたんだよ。それで、私らは『ありがとう。じゃあね』って言って別れてさ、とっととナイトショーに行ったわけ。ははは」

「ひどいなあ。ははは」

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執筆者プロフィール
六車由実
六車由実 1970年静岡県生まれ。民俗研究者。デイサービス「すまいるほーむ」管理者・生活相談員。社会福祉士。介護福祉士。2008年に東北芸術工科大学准教授を退職し、静岡県東部地区の特別養護老人ホームの介護職員に転職。2012年10月から現職。「介護民俗学」を提唱し実践する。著書に『神、人を喰う』(第25回サントリー学芸賞受賞)、『驚きの介護民俗学』(第20回旅の文化奨励賞受賞、第2回日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞)。
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