ブックハンティング・クラシックス
ブックハンティング・クラシックス(23)

北朝鮮の“壮大な詐欺劇”を初めて暴いた先駆的実録

執筆者:黒田勝弘 2007年1月号
カテゴリ: 国際 書評
エリア: 朝鮮半島

『凍土の共和国 北朝鮮幻滅紀行』金元祚著亜紀書房 1984年刊 一九五〇年代末から七〇年代初めにかけて、在日朝鮮人の北朝鮮への組織的な“祖国帰還”というのがあった。日本在住の約九万四千人の在日朝鮮人たちが、日本での生活を清算し北朝鮮に“帰国”したのである。当時、世界的には共産圏のソ連や東ヨーロッパから西側への脱出というのはあった。しかし在日朝鮮人の北朝鮮帰還のように、資本主義・自由主義世界から共産主義世界への“エクソダス(脱出)”というのはなかった。 それだけにこの“事件”は日本ではもちろんのこと、国際的にも注目された。帰還していった在日朝鮮人たちは「地上の楽園」と宣伝されていた北朝鮮での新しい生活に夢を抱き、「祖国での社会主義建設」に胸をふくらませ、「差別と偏見に満ちた苦労ばかりの日本」を出ていった。 日本社会もこれを大きく歓迎し、温かく(?)送り出した。とくに社会主義幻想と「朝鮮」に対する歴史的贖罪意識が色濃く残っていた当時のジャーナリズムはこれを歓迎し、応援した。また、在日朝鮮人をどこか“厄介者”視していた多くの普通の日本人たちも「結構なことだ」と歓迎した。この北朝鮮帰還事業は赤十字が担当した。

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執筆者プロフィール
黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員。1941年生れ。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長兼論説委員を経て現職。2005年度には日本記者クラブ賞、菊池寛賞を受賞。在韓30年。日本を代表するコリア・ウォッチャーで、韓国マスコミにも登場し意見を述べている。『“日本離れ”できない韓国』(文春新書)、『ソウル発 これが韓国主義』(阪急コミュニケーションズ)など著書多数。
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