世界を歪める産油国マネーの膨張スパイラル

執筆者:五十嵐卓 2008年2月号
エリア: 中東

「一〇〇ドル原油」は“第三次石油危機”の象徴だ。無限循環で増え続ける産油国マネーと政府系ファンドのリスクは限りなく大きい。 二〇〇八年の世界経済は日欧米の株式相場の急落、ドル急落など波乱の幕開けとなった。引き金となったのは、原油先物市場だ。新年二日にニューヨーク・マーカンタイル取引所のWTI原油先物は、史上初めて一バレル一〇〇ドルに乗った。一〇〇ドル突破はとりあえず瞬間的な出来事だったとはいえ、原油価格が昨年秋以降、九〇ドル台を安定して維持していることは、原油価格のステージが歴史的な代替わりを遂げたことを示している。「原油の需給は決して逼迫しておらず、先物価格は実態をまったく反映していない」。多くのエネルギー専門家はこう主張し続けている。事実としてはまったく正しい。実態をよく知らない一部のメディアが騒ぎ立てるように、中国、インドの経済成長によって原油が不足し、奪い合いの状態になっているわけでもない。石油輸出国機構(OPEC)加盟国の石油相が昨年から相次ぎ指摘しているように「OPECが増産して原油供給を増やしても、実際には原油の買い手はおらず、余剰になるだけ」なのだ。 にもかかわらず、原油先物価格が上昇を続けるのは、原油が金(ゴールド)に似通った、金融市場に直接連動した投資商品に変質したからだ。今や原油は実需とはほとんど無関係に相場が形成されるようになったとみる必要がある。金の相場に関して「金のネックレスやブレスレットを買う中国人やインド人が増え、需給が逼迫している」と考え、買いを入れる投資家がいないように、原油の先物価格形成も実際の需給とは大きな乖離ができている。

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