「チベット弾圧の報い」に苦しむ胡錦濤

執筆者:藤田洋毅 2008年5月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中国・台湾

一九八九年、自ら騒乱を封圧したチベットで、いままた翻る反旗――。五輪という「半世紀に一度」の機会に胡指導部が翻弄される。「ハイウェーを造って欲しい、財政援助してくれ……そんなことをわれわれが一度でも求めましたか? 漢族を入植させ経済建設をリードしてくれとお願いしましたか? われわれはダライ・ラマに帰って来て欲しい。一貫して、それ以外の要求はないのです」――肌の奥まで日焼けした若者の口から、激しい言葉が噴き出した。ふだんは笑顔を絶やさず温厚な人柄だけに、憎悪すらにじむ口調にたじろいだ。 若者は、中国チベット自治区の区都ラサ生まれのチベット族。チベット旧社会の貴族階級出身の父親が「共産党によるチベット解放を支持したため、周囲よりは優遇されて育った」という。チベット族エリートとして北京の大学に進み、いまではある政府部門の中堅幹部だ。ひょんなきっかけで知り合い、若者が海外に出た際、食事に誘った。初めての日本酒が効いたのか、押さえ切れない本音がこぼれ出る。若者のもうひとつの顔を初めて見た一夜だった。 一九五九年のチベット動乱の四十九周年である三月十日を契機とする騒乱は、十四日にラサで始まった。すぐに周辺の四川・甘粛・青海各省のチベット族自治州に飛び火。八月の北京オリンピック開会式ボイコット論が湧き起こり、各国での聖火リレーも抗議運動に見舞われるなど、国際社会へも波及し続けている。

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