「総合力」と「台車」で勝負する川崎重工業――海を越える日本の鉄道車両 3

執筆者:船木春仁 2008年6月号
カテゴリ: 経済・ビジネス

 少し大げさに書けば、「たった〇・一二秒が川崎重工業の鉄道車両事業を飛躍させる節目になった」。 米国では一九九五年から九六年にかけて重大な鉄道事故が多発し、これをきっかけに鉄道車両の設計を見直す動きが相次いだ。川崎重工業(以下、川重)も、ニューヨーク州ロングアイランド鉄道などから受注していた二一七両の二階建て車両の設計変更を求められた。すでに調達済みだった原材料は自社負担で廃棄しなければならず、一両当たり一六〇万ドルで受注していた車両の製造コストは二倍に膨らんだ。 そのため鉄道車両事業は、九七年度と九八年度の二期連続で一〇〇億円を超える赤字を余儀なくされた。ニューヨーク州にある現地生産子会社は、操業率の低下で債務超過に陥り、九九年には川重が六〇〇〇万ドルを増資した。八三年にニューヨーク市へ地下鉄車両を納入して本格化した北米の鉄道車両事業は、踏ん張りきれるかどうかの瀬戸際に立たされた。 そうしたなかで、九七年のニューヨーク市交通局(NYCT)からの地下鉄車両四〇〇両の受注は朗報だった。しかし、それには、「満員の乗客を乗せ(約三七トン)、時速二七キロで壁に衝突しても壊れず、実際の衝突結果とシミュレーション結果を一致させる」という厳しい条件が付けられていた。

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