経済の頭で考えたこと
経済の頭で考えたこと(11)

米欧中央銀行は「異常事態」からいかに脱出するのか

田中直毅
執筆者:田中直毅 2009年1月号
エリア: 北米

 FRB(米連邦準備制度理事会)とECB(欧州中央銀行)は、マネーが止まり大童だ。戦陣にあってかぶとを脱ぎ、乱れ髪になって奮戦する様を、陰で冷静に見ているのは誰あろう投資家だ。二〇〇九年のシナリオは、奮戦を続けるFRBとECBの行動に即して展開する。日銀はとりあえず脇役だが、中長期的には「奮戦」も覚悟しなければならない。その時の相手は日本政府である。 〇八年十二月三日のFRBの貸借対照表(B/S)は、一年前に比して二・三六倍の二兆一千七百億ドルに膨張した。FRBはもともと舞台の中央にあって「銀行の銀行」という姿をとるはずだ。ところが一旦マネーが止まると、あたかも「銀行にカネがない」状況に立ち到り、銀行が役に立たず、やむをえず舞台から平土間に降りたのだ。舞台で見得を切る役者に平土間から声がかかるのが市場との対話というやつだ。中央銀行は市場(平土間)との距離間のなかにこそ、その存在をかけうるのだ。 ところがマネーが止まると、銀行の脇に臨時の店舗を開設し、本来なら銀行に出入りする客の相手をし始めた。もはや見得を切る場も、掛け声を出す機会も消失した。市場との対話ではなく、中央銀行は市場の雑踏の中に入ってしまった。

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執筆者プロフィール
田中直毅
田中直毅 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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