“お祭り騒ぎ”がにじませたタイ民主主義の深刻な劣化

樋泉克夫
執筆者:樋泉克夫 2009年5月号
カテゴリ: 国際

 タイで二〇〇五年の年末にはじまった内政混乱は、総選挙やクーデターを繰り返した挙句の昨秋、反タクシンを掲げる民主主義市民連合(PAD)が首相府占拠に次いで国際空港封鎖という強硬手段にでたことで新局面を迎え、タクシン元首相は事実上の国外逃亡。昨年末、反タクシン勢力を糾合してアピシット政権が誕生するに及んで“一件落着”するかにみえた。だが三月末、タクシン支持を掲げる反独裁民主同盟(DAAD)が首相府周辺を中心にアピシット退陣運動を開始し、再び混乱しはじめた。 三月末、タクシン支持集会に足を運んだ。そこで目にした光景は、PADが〇六年初頭以来断続的に続けてきた反タクシン運動そのまま。敢えて違いをいうなら、PADの会場が国王のシンボルカラーといわれる黄色で埋まっていたのに対し、DAADは赤一色。片や黄色いTシャツに「愛国」「国王を愛す」などと染められた鉢巻やスカーフなら、他方はタクシンのイラスト入りの赤いTシャツに「タクシンを愛す」「アピシット強盗政権」などと書かれた鉢巻やスカーフ。会場周辺道路に溢れる屋台では政治運動グッズから飲み物、食べ物まで売っている。テントの下では床屋や足マッサージの無料サービスが受けられ、さらに救護所まである。どちらも同じで、お祭り気分だ。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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