天安門事件から20年 いまも中国に残る「禍根」

執筆者:藤田洋毅 2009年6月号
カテゴリ: 国際
エリア: 中国・台湾

世界に衝撃を与えた事件からこの六月で二十年。いまや学生たちは政治運動よりも就職活動に熱心とも伝えられる。しかし、あの悲劇が落とした影は長く濃く、今日の中国でも到る所に姿を覗かせる。比類なき中国ウォッチャーがこの二十年を改めてたどり真相に迫るシリーズ第一回。「腕に巻いて外出したことはないなあ。たまに眺めるだけさ」 老軍人の手には金色に輝く腕時計が載っていた。文字盤には赤い星に金色で八一と縦書きした軍マークの下に「戒厳部隊 1989.6.平息暴乱記念」とあった。 一九八九年六月四日、民主化を求め北京の天安門広場に陣取った学生らを武力で排除する、いわゆる「六・四天安門事件」が起き、世界を震撼させた。筆者の目の前に座る老軍人は、そのとき出動した一人だ。事件から五日後、当時の最高指導者、※トウ小平中国共産党中央軍事委員会主席(肩書きは当時、以下同)は、出動部隊の将官を中南海懐仁堂に招き「人民の子弟兵は党と国家の鋼鉄の長城だ」と称え、腕時計を授与、その後、作戦現場で働いた士官・下士官らの一部にも似たデザインの腕時計を配った。この金時計こそがその「軍功表(表=腕時計)」だった。「一万ドルで譲ってやろうか」と老軍人。「五千ドルになりませんか」と返すと、老軍人は「冗談だよ」と苦笑。普段の豪快な笑いは、ついに聞けずじまい。「軍功表」を持てあましているさまがありありだった。

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