官房長官が部下任せにできない仕事

原英史
執筆者:原英史 2010年9月16日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

 菅内閣の改造人事が大詰めを迎えている。メディアでは「留任」「交代」情報などが飛び交っているが、真っ先に留任確定とされたのが仙谷官房長官だ。 

 官房長官というポストは、改めて言うまでもなく、各省の政策の総合調整などを担う重要ポストだが、とりわけ、部下任せにできず、自らやらないといけない仕事が3つあると言われる。
(1)官房機密費の金庫番、
(2)毎日2回の官房長官会見、
(3)国家レベルの危機管理、
の3つだ。
 
 特に、(3)危機管理は重要だ。場合によっては国の存亡や多くの人命にも関わる。
 なぜ、「部下任せにできない」かというと、緊急時対応では、平時と違って、「みんなで議論して」とか「いろんな知恵を出し合って」とか言っている暇がない。ともかく司令官の指揮の下に即応するしかないからだ。
 筆者は、かつて内閣官房の安全保障・危機管理室で勤務したことがあって、緊急時対応も何度か経験したが、緊急情報が入ったときは、関係者に順番に報告・・なんていう暇はないので、すぐに官房長官室に飛び込んだ。当時の野中広務官房長官の的確な判断・対処は印象的だったが、逆に、資質のない人が司令官だったら大変なことになると思ったものだ。
 
 危機管理は、(2)報道官としての役割とも、密接にリンクする。特に外交・安全保障がらみの危機対応では、政府としてどういうメッセージを発するかということ自体が危機管理だからだ。
 
 こうした意味で、とても気になっているのが、仙谷官房長官の尖閣漁船問題での発言だ。
 報道によると、9月13日の官房長官会見で、
「漁船の違法操業との関係でガス田協議を中止するといわれても困る。私の予測では、(船長以外の)14人と船がお帰りになれば、また違った状況が開かれてくる」
と発言したという。もちろん、会見での発言だから、政府の公式メッセージだ。
 
 その後、この「予測」がすっかり外れて、中国側が強硬姿勢を強めているのは周知のとおりだが、問題は、予測能力以上に、こんな発言をしたことだ。
 要するに「こちらとしては、早く事をおさめたい。船長以外と船は返すので、これで納得してくれたらいいのだけど」と正直に本音を吐露してしまったわけだから、これを聞いた相手側が「攻めどころだ」と思ったのは当然だろう。
 少なくとも、この発言に関する限り、この人で大丈夫なのかなと思ってしまう。
 
(原 英史)

twitter.com/haraeiji

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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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