レアアース騒動で浮かび上がった米中の「地下水脈」

執筆者:加瀬友一 2010年10月25日
カテゴリ: 国際 経済・ビジネス
エリア: 中国・台湾 北米

 中国が日本だけでなく、米欧に対してもレアアースの輸出を絞り始めた。中国の輸出規制について米政府が米通商法に基づく調査を始めたことへの対抗措置とみられている。米中間の緊張は一触即発の様相だが、経済界の深層を探ると、地表からは見えない両国の太い地下水脈が見えてくる――。

動かなかった米国

輸出制限で緊張が高まりつつある(中国のレアアース積出港) (c)AFP=時事
輸出制限で緊張が高まりつつある(中国のレアアース積出港) (c)AFP=時事

 9月上旬、尖閣諸島沖で起きた中国漁船の衝突事件を受けて日中間の緊張が高まる中、米国ワシントンでは、日本政府から非公式に派遣された交渉部隊の一員が、タメ息まじりで嘆いていた。 「今こそ日米がガッチリ手を組める局面のはずなのに、なぜオバマ政権は動こうとしないのだろう……」  非公式部隊が担っていた使命は、米政府を動かしてレアアース(希土類)問題の解決の糸口を見出すこと。レアアースの輸出規制を強化する中国を相手どり、日米共同で世界貿易機関(WTO)への提訴に持ち込むよう、オバマ政権の中枢を説得する秘密裏の交渉だった。既にブリュッセルでは、別の日本政府のチームが欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会に、同様の打診を持ち込んでいた。WTO提訴という切り札を使い、日米欧が対中圧力で共同歩調を採れば、中国の強硬姿勢を一気に崩せるという皮算用があった。  だが、こうした水面下の必死の工作も虚しく、米国の通商政策を担う米通商代表部(USTR)の態度は一貫して冷淡だった。オバマ政権の中枢にいる人物は「レアアースの供給は中期的には問題がなく、今の局面ではWTOに提訴するには及ばない」と繰り返すばかりだった。

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