ネット革命の現状への違和感を超えて

執筆者:梅田望夫 2000年2月号
カテゴリ: IT・メディア 金融

 昨年十月くらいから漠然とした不安と危機認識を持ち始めていた。 シリコンバレーの魅力やネット革命の可能性について肯定的に描き続けてきた私にとって、違和感あふれる現実の事象群が立ちはだかってきたからだ。断片的な違和感をきちんと整理し、新しい「自分の立場」を表明しなければならない。そんな思いが日増しに募り、十二月二十日から一月十日まで人と会う約束をいっさい入れず、ひとり勉強しながら考え続けた。結果、その違和感は次の五点に整理された。 第一に、シリコンバレー的世界があれよあれよという間に肥大化の一途をたどっている危険だ。シリコンバレー的世界とは、直接金融に支えられた起業家主導型経済システムのこと。投資ファンドのサイズは世界規模で膨れ上がっており、ナスダックに代表されるハイリスク型株式市場は世界中に用意されつつある。シリコンバレー的世界をこんなに安易にグローバル化し、急激にスケールアップしても大丈夫なのだろうか。 シリコンバレーはずっと「世界の片隅にあって輝いていた存在」であった。世界の片隅で、起業家主導型経済という特殊なシステムの伝統を、実にしっかりと育んできた。ハイリスクを本質的要素として内包するゆえ、システムは幾多の危険をはらんだものだ。このシステムを表面的に模倣することの危険はいくら強調してもし過ぎることはないと思う。

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執筆者プロフィール
梅田望夫 1960年東京都生れ。94年渡米、97年コンサルティング会社ミューズ・アソシエイツを起業。著書に『ウェブ進化論』(ちくま新書)、『ウェブ時代をゆく』(同)、『ウェブ時代 5つの定理』(文藝春秋)、『ウェブ人間論』(共著、新潮新書)など。メジャーリーグの野球、そして将棋の熱烈なファン。
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