饗宴外交の舞台裏
饗宴外交の舞台裏(29)

フランス料理に焼酎! 前代未聞のエリゼ宮晩餐会

西川恵
執筆者:西川恵 2000年5月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

 森新首相は四月二十八日から九日間、沖縄サミットに参加する米欧露七カ国を歴訪した。領土問題や平和条約交渉を抱えたロシアは別にして、米欧六カ国はいずれも滞在時間が二十四時間に満たない駆け足訪問だったが、その中でわざわざ晩餐会でもてなしたのが親日家のシラク仏大統領である。 五月二日夜、エリゼ宮東翼の「ポルトレ(肖像)の間」。裏庭に面したさして大きくない広間は、かつてはナポレオンの后ジョゼフィーヌの居室で、儀式ばらない親密な会食を催すときに使われる。この夜の会食者は十五人前後。しかもサミットの議題などについて意見交換するワーキングディナーで、実務重視の饗宴だった。メニューは次の通りである。 ホワイトアスパラガス、ムスリーヌ・ソースで 子羊の七時間料理、ポテト添え チーズ デザート サントネー97年(白) シャトー・カノン・ラ・ガフリエール(赤) テタンジェー コント・ド・シャンパーニュ90年 前菜は、いま正に旬のホワイトアスパラガス。変わった名前の主菜は、シラク大統領の出身地である仏中央部のコレーズ県の子羊を食材に、文字通り七時間かけた料理である。 料理長のジョエル・ノルマン氏に聞くと「北京ダックに想を得た料理」という。まず四時間コンソメで蒸し煮した後、オーブンで三時間。肉汁をかけながら照りをつけていく。「フォークで肉がほぐれますからナイフはいりません」という料理長の言葉通り、森首相ら日本側出席者に「肉が軟らかく大変美味しい」と大好評だった。

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執筆者プロフィール
西川恵
西川恵 毎日新聞客員編集委員。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、論説委員を経て、今年3月まで専門編集委員。著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、本誌連載から生れた『ワインと外交』(新潮新書)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。本誌連載に加筆した最新刊『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)が発売中。
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