ミロシェビッチ逮捕劇 裏にちらつく「アメリカの影」

執筆者:菅原出 2001年4月号
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ 北米

「バルカン最後の独裁者」と言われたミロシェビッチ前ユーゴ大統領が、遂にセルビア当局に逮捕された。三月三十日の深夜から三十時間以上にも亘り政府側とミロシェビッチ派の睨み合いが続き、政府側は二度にわたり前大統領逮捕を試みたが失敗、政府側とミロシェビッチ派の間で銃撃戦も展開された。こうして緊迫した状況が続いた後、政府側と前大統領側の代理人が長い交渉に入り、一日午前四時過ぎ、前大統領が政府側の説得に応じて投降した。 この「逮捕劇」は日本のメディアでも大きく取り上げられたが、いくつかの重大な点が見落とされている。まず今回の逮捕を実施した中心人物がジンジッチ・セルビア共和国首相だったことを確認する必要がある。ジンジッチ政権は一月二十五日に議会の承認を得て正式に発足したが、今回の逮捕に至る一連のミロシェビッチ派取締り作戦はその直後に開始されている。 二月初頭、首相はパウエル米国務長官との会談後に、「ミロシェビッチ前大統領を裁判にかける証拠を集めており、間もなく起訴に踏み切る」と語り、逮捕に向け狼煙を上げた。続けてミロシェビッチ派の判事や検事を解任し、前大統領の側近だったマルコビッチ秘密警察前長官も逮捕、着々と外堀を埋め始めた。ジンジッチ首相が前大統領逮捕を急いだ理由は、ユーゴ新政権が三月三十一日までに民主化に向けた断固たる姿勢を示さなければ、ブッシュ米政権がユーゴへの一億ドルの緊急融資を凍結するおそれがあったからだ。

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