「日本は対中戦争5日で敗戦」――米ランド研究所シミュレーションの含意

執筆者:林吉永 2016年2月13日
エリア: 北米 アジア

 米国の外交政策研究誌『Foreign Policy』(2016年1月15日)に掲載された、日中戦争が起こった場合、日本が5日間で敗北するという米ランド研究所のシミュレーションに関して、空自元空将の織田邦男氏は、「シミュレーションの詳細が不明なため、この評価は難しい。複雑な要因が入り乱れる国際社会の中で、こんなに単純にはいかないというのが率直な感想だ。それより、ランド研究所は今、なぜこういう衝撃的な結果を発表したのだろう。筆者はその思惑の方に興味をそそられる」と指摘している(JB PRESS 2016年2月4日「あまりに稚拙な『日本が5日で敗北』シミュレーション 冷戦時のデジャブ、『コミットメント・パラドクス』の罠にはまる?」参照)。
 2009年、米議会国防報告で中国の対米戦略「A2/AD “Anti-Access/Area Denial”」が明らかにされてから、アメリカの対中戦略に採用されたのが「ASBC “Air Sea Battle Concept”」である。日中戦争はその一部を成すから、アメリカにおいて軍との関係がことのほか密接なランド研究所が「日中戦争至日本敗戦」のシミュレーションを行ったことに何らかの企図が在ると考えるのは的を射ている。しかし他方で次のように考えると、対中戦争の蓋然性が極めて低いことも確かである。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
林吉永(はやしよしなが) はやし・よしなが NPO国際地政学研究所理事、軍事史学者。1942年神奈川県生れ。65年防衛大卒、米国空軍大学留学、航空幕僚監部総務課長などを経て、航空自衛隊北部航空警戒管制団司令、第7航空団司令、幹部候補生学校長を歴任、退官後2007年まで防衛研究所戦史部長。日本戦略研究フォーラム常務理事を経て、2011年9月国際地政学研究所を発起設立。政府調査業務の執筆編集、シンポジウムの企画運営、海外研究所との協同セミナーの企画運営などを行っている。
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