「勝海舟語録」で読み解く中国の「本質」

樋泉克夫

 中国では2016年の政治方針を論議する双会(全国人民代表大会=全人代、中国人民政治協商会議=全国政協)が3月5日から始まった。議題の中心が経済問題――輸出不振、鉄鋼・石炭などの生産過剰、不動産の在庫過剰、理財商品を軸とする債務危機、金融不安、流動性過剰によるインフレ発生危機など――に集中することは明らかだろう。経済面での構造改革のみならず、習近平政権の政権基盤、全面的な軍制改革にみられる軍拡路線、現在の中国の行方に立ちはだかる様々な問題と中国政府の対策について、日本でも百家争鳴状態で多くの議論や観測が見られる。

 思えば、この種の甲論乙駁的様相は、文革当時も同じだったような気がする。いや幕末の文久2(1862)年に幕府が貿易の可能性を探るべく上海に派遣した千歳丸に乗り込んだ高杉晋作らが書き残した中国認識以来、日清戦争、日露戦争、満州事変、盧溝橋事件、さらには国共内戦、中華人民共和国建国、毛沢東時代を経て現在に至るまで。いいかえるなら、中国という国家、漢族の民族性と彼らが構成する社会に就いての認識が、常に揺れ動いていたことが、その根底にあったように思える。

 もちろん、国内の政治経済状況やら国際環境によって国の立ち居振る舞いが変化することは当然であり、中国もまた例外ではない。毛沢東の時代に現在の中国を想定することなどできなかった。反対に現在の中国から毛沢東の時代を思い描くことは至難だ。とはいうものの、やはり中国には中国の、中国人には中国人の特性のようなものがあるのではないか。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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