軍事のコモンセンス (19)

「独裁」と「統率」と「文民統制」

執筆者:冨澤暉 2017年5月20日
エリア: アジア
東日本大震災発生の翌日、国民へのメッセージを述べる菅直人首相(当時)。「緊急事態」だからこその「独裁」は、望むべくもなかったか (c)時事

 

「憲法改正といえば9条から」というのが筆者周辺の多くの人々の合言葉なのだが、それは難しいことらしく、「自民党は先ずは緊急事態条項で憲法改正を突破しようとしている」とマスコミは報じ、同時に、これに反対のジャーナリスト・学者などを動員して「この緊急事態条項が如何に危険であるか」とキャンペーンを張っている。

 その反対学者の若手代表とも言える木村草太・首都大学東京教授(憲法学)は、「世界の多くの憲法に緊急事態条項があることは事実だが、各国憲法はそれが政府の独裁とならないように発動条件を厳格に定め、さまざまな歯止めを準備している。それに引き換え2012年に発表された自民党憲法改正草案『第98条(緊急事態の宣言)・第99条(緊急事態の宣言の効果』の発動要件はきわめて曖昧であり、国会承認は事後でも良いとされていて手続き的歯止めはかなり緩い」「自民党草案のような内閣独裁条項は比較法的に見ても異常だと言わざるを得ない」と言っている。

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執筆者プロフィール
冨澤暉(とみざわひかる) 元陸将、東洋学園大学理事・名誉教授、財団法人偕行社理事長、日本防衛学会顧問。1938年生まれ。防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊に入隊。米陸軍機甲学校に留学。第1師団長、陸上幕僚副長、北部方面総監を経て、陸上幕僚長を最後に1995年退官。著書に『逆説の軍事論』(バジリコ)、『シンポジウム イラク戦争』(編著、かや書房)、『矛盾だらけの日本の安全保障』(田原総一朗氏との対談、海竜社)。
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