風が時間を
風が時間を(24)

まことの弱法師(24)

徳岡孝夫
執筆者:徳岡孝夫 2018年3月18日
エリア: 北米 日本

 新学期になってまもなく、午後になると遠くからプカプカドンドンやるブラスバンドが聞え始めた。「あれは何だ」と室友に問うと「知らないのか。コルゲート大学とのフットボール定期戦の準備だよ」と教えてくれた。

 大学院生にとってはやや他人事だが、学部生は張り切っている。「コルゲートの歯磨きを使ったら100人中99人がムシ歯になった」という相手を野次る立て看をキャンパス内の各所に張っている。コルゲートは有名な歯磨きのブランドである。

 今年は我がシラキュースが断然有利らしい。米国のカレッジフットボールの順位は日本の野球のように直接対決で決まるのではなく、AP・UPI通信のスポーツ記者が投票して決める。その年のシラキュース大学はアーニー・デービスという超人的ランニングバックの活躍で全米1位にランクされていた。定期戦が迫るとブラバンの練習も熱を帯びてくる。そして当日が来た。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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