難民救助船「アクエリウス号」事件が浮き彫りにしたEU内「亀裂」の深刻さ

ようやくスペインに上陸できた「アクエリウス号」の難民たち(C)AFP=時事

 

 6月17日(日)スペイン東部のバレンシアの市庁舎の壁には、垂れ幕が風にたなびいていた。「私たちは受け入れます」、「過去は黒と白だ。未来は多彩な色だ」とスローガンが書かれていた。そして港では、2300人の支援者たちが前日から待機していた。赤十字社から1000人、400人もの通訳、350人もの警官、そして政治家やメディア……。約630人を乗せて1週間以上地中海を漂流した難民救助船「アクエリウス」号の到着だ。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
渡邊啓貴(わたなべひろたか) 帝京大学法学部教授。東京外国語大学名誉教授。1954年生れ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程・パリ第一大学大学院博士課程修了、パリ高等研究大学院・リヨン高等師範大学校・ボルドー政治学院客員教授、シグール研究センター(ジョージ・ワシントン大学)客員教授、外交専門誌『外交』・仏語誌『Cahiers du Japon』編集委員長、在仏日本大使館広報文化担当公使(2008-10)を経て現在に至る。著書に『ミッテラン時代のフランス』(芦書房)、『フランス現代史』(中公新書)、『ポスト帝国』(駿河台出版社)、『米欧同盟の協調と対立』『ヨーロッパ国際関係史』(ともに有斐閣)『シャルル・ドゴ-ル』(慶應義塾大学出版会)『フランス文化外交戦略に学ぶ』(大修館書店)『現代フランス 「栄光の時代」の終焉 欧州への活路』(岩波書店)など。最新刊に『アメリカとヨーロッパ-揺れる同盟の80年』(中公新書)がある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top