世界漫遊「食考学」の旅 (21)

【香港】「混沌たる香港」の混沌たるワンタン麺とデモ

執筆者:野嶋剛 2019年6月21日
エリア: アジア
「新聞自由」に貢献した一杯(筆者提供、以下同)

 

 中国に「民以食為天」という古くから今日まで語られ続けてきた名句がある。民は食を以って天と為す。つまり、民にとって天下国家は食べられてこそなんぼ、ということで、確かに中国人の価値観の1つを言い表しているところがある。

 いまの中国政府が民に強いている「経済が成長しているのだから、共産党の一党独裁には文句を言うな」という暗黙のルールとも、底流でしっかりつながっている。

 中国共産党はそのルールを、大陸から「一国二制度」の香港に適用しようとしている。これ以上の「民主」は唱えるな、中央政府に挑戦するな、さすれば繁栄は保証しよう。一昨年、返還20周年を記念して香港を訪れた習近平中国国家主席は、そう語った。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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