MRIC通信 (35)

いまや意味のない「濃厚接触者認定」を漫然と続けていることの弊害

執筆者:医療ガバナンス学会 2020年12月7日
タグ: 新型コロナ
エリア: アジア

飲み会など「密」の場で濃厚接触者とされることも(写真はイメージ)
 

【筆者:和田眞紀夫わだ内科クリニック院長(略歴は文末に)】

 濃厚接触者とは何なのか。何のためにこのような概念を設けて行動自粛を強要しているのか。当たり前のようで当たり前ではない。この答えを書く前に具体的な事例について説明しておきたい。

 先週末に当院にプロの音楽家の方が来院された。その日の朝に37.1℃の微熱があって倦怠感があるという。連日のライブ演奏を控えている状況で、もしコロナであったら多くの人に感染させてしまうという懸念から早急のコロナの検査が必要だった。日頃当院でも唾液のPCR検査を実施しているのだが、あいにくその日は連休初日の夕方。連休中は民間の検査会社が休みのためにPCR検査用の検体を採っても検査をしてもらえない(日・月曜日に感染者数の発表が少ないのはこのためである)。待って連休明けにPCR検査を実施しても結果が出るのは早くて翌日で、コロナかどうかがわかるのに4日も5日もかかってしまうことになる。

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執筆者プロフィール
医療ガバナンス学会(いりょうがばなんすがっかい) 広く一般市民を対象として、医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から解決し、市民の医療生活の向上に寄与するとともに、啓発活動を行っていくことを目的として設立された「特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所」が主催する研究会が「医療ガバナンス学会」である。元東京大学医科学研究所特任教授の上昌広氏が理事長を務め、医療関係者など約5万人が購読するメールマガジン「MRIC(医療ガバナンス学会)」も発行する。「MRICの部屋」では、このメルマガで配信された記事も転載する。
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