悪党たちの中華帝国 (1)

はじめに――「中華帝国」と「悪党たち」

執筆者:岡本隆司 2021年4月29日
カテゴリ: 社会 カルチャー 政治
エリア: アジア
悪党たちはいかにして「帝国」をつくったのか (C)EPA=時事

 

 本連載は銘打って「悪党たちの中華帝国」という。

 これだけだと、何の変哲もないタイトルにみえるかもしれない。しかし筆者としては、少しくしかけ、ないし戦略を含ませたつもりである。そこでまず、タイトルの説明からはじめたい。

「中華帝国」とは何か

 末尾の「帝国」とは、多義的な言い回し・概念である。わが日本の歴史にまつわる語彙でも、大日本帝国・帝国主義・帝国日本など、含意の異なるものが、すぐいくつも思い浮かぶにちがいない。そんなことばをあえて用いて「中華帝国」といったのは、そうした多義を兼ね合わせたいねらいがある。

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執筆者プロフィール
岡本隆司(おかもとたかし) 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)、『悪党たちの中華帝国』(新潮選書)など多数。
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