法律成立でさらに注目「宇宙資源」は誰のものか(下)

執筆者:青木節子 2021年7月2日
タグ: 国連 日本 宇宙
エリア: アジア 北米
6月15日の参議院本会議で、米国よりも進んだ内容を持つ宇宙資源法が可決成立した(写真は一礼する井上信治科学技術担当相)(C)時事
世界で4番目に「宇宙資源法」を制定した日本。規制派と自由派の間に溝がある「宇宙資源」開発管理の国際ルール作りに、一定の発言力を得られたという意味で評価すべき取り組みだ。[本篇(上)はこちらからお読みになれます]

 多国間枠組を好ましいとする動向は勢いを得て、2018年になると単なる意見交換ではなく、詳細な宇宙資源開発利用の国際枠組に向けた議論を進めるためにワーキンググループ(WG)を設置する方向性が模索されるようになっていった。しかしこれは、国連という場だからこその「世論」ともいえる。

老獪なヨーロッパ:ルクセンブルク法とハーグWG

 2017年7月には、ルクセンブルクが宇宙資源法を制定し、「宇宙資源は取得することができる」(第1条)と明確に規定した。所轄官庁を定め、宇宙資源開発の許可・監督手続も盛り込んでいる点など、法律自体としては、米国より一歩進んでいるといえるものである。理論的には同法に基づいて企業はすぐに活動許可を求め、宇宙資源採取に進むことができるからだ。

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執筆者プロフィール
青木節子(あおきせつこ) 1959年生まれ。慶應義塾大学大学院法務研究科教授。専門は国際法、宇宙法。1983年慶應義塾大学法学部卒業、1990年カナダ・マッギル大学法学部附属航空・宇宙法研究所博士課程修了(法学博士)。防衛大学校などを経て、2016年より現職。2012年より内閣府宇宙政策委員会委員。著書に『中国が宇宙を支配する日』(新潮新書)、『日本の宇宙戦略』(慶應義塾大学出版会)、『宇宙六法』(共編、信山社)など。
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