「グローバル中軸国家」へ進む韓国と「日米韓協力」の行方を決める「3要素」

執筆者:西野純也 2023年5月9日
エリア: アジア 北米
米韓は「グローバル包括戦略同盟」に成長したが、日韓関係はどこまで進化するか[2023年4月26日、ワシントンでの尹錫悦大統領(左)とバイデン大統領(右)](C)EPA=時事
米韓首脳会談での「ワシントン宣言」、その前後に行われた2度の日韓首脳会談は、安全保障分野にとどまらず、包括的な戦略を共有する関係への進化を予感させる成果を上げた。だが、特に日韓関係では、双方の否定的な世論の存在をどう乗り越えるかがカギとなる。

 4月末の尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領の国賓訪米は、米韓同盟70周年を祝い、アピールするのに絶好の機会となった。ジョー・バイデン米大統領との首脳会談及び共同会見を通じて米韓両首脳は良好な関係を十分にアピールしたし、米議会や国賓晩餐会での尹大統領による英語での演説や歌唱は、米国指導層および国民の心を掴んだと言えよう。

 同盟70周年を記念する首脳共同声明では、軍事安全保障だけでなく、経済的繁栄、民主主義、技術革新の推進における両国の世界大でのリーダーシップに着目し、米韓同盟が朝鮮半島をはるかに超えて「グローバル包括戦略同盟」に成長したことを確認した。

 一方で、米韓同盟の核心は依然として軍事安全保障、すなわち高まり続ける北朝鮮の核・ミサイル脅威への備えにあることに変わりはない。米国の核による対韓「拡大抑止」コミットメントを再確認した「ワシントン宣言」の発出が、今回の尹大統領訪米の最も重要な成果だとされたのもそのためである。

強調された「日米韓3カ国協力」

 尹大統領訪米のもう一つの重要な成果は、日米韓3カ国協力の重要性が改めて強調されたことである。尹大統領訪米とそれに先立つ3月の訪日、そして5月の岸田文雄首相訪韓という日本、米国、韓国を舞台とした3つの首脳会談は、相互に密接に関連した一連の流れとして理解されるべきである。広島G7サミットの際に日米韓3カ国首脳会談が開かれれば、それはこの一連の会談を総括する場となるであろう。……

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カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
西野純也(にしのじゅんや) 慶應義塾大学法学部政治学科教授、同大学朝鮮半島研究センター長。慶應義塾大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科修士課程卒業、同博士課程単位取得。韓国・延世大学大学院博士課程卒業、政治学博士。専門は現代韓国朝鮮政治、東アジア国際政治、日韓関係。在韓国日本大使館政治部専門調査員、外務省国際情報統括官組織第3国際情報官室専門分析員、ハーバード・エンチン研究所交換研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員(ジャパン・スカラー)、ジョージ・ワシントン大学シグールセンター客員研究員、慶南大学極東問題研究所招聘研究委員、延世大学統一研究院専門研究員などを歴任。著書に、『激動の朝鮮半島を読みとく』(編著、慶應義塾大学出版会、2023年)、『アメリカ太平洋軍の研究』(共著、千倉書房、2018年)、『朝鮮半島の秩序再編』(共編著、慶應義塾大学出版会、2013年)、『転換期の東アジアと北朝鮮問題』(共編著、慶應義塾大学出版会、2012年)など。
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