「イスラエルの核」という隠れたテーマ

Foresight World Watcher's 4Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2023年10月21日
タグ: イスラエル
エリア: 中東
抑止を破られたイスラエルの「過剰報復」に懸念が高まる[ベングリオン空港に到着したバイデン大統領を迎えたイスラエルのネタニヤフ首相=2023年10月18日、イスラエル・テルアビブ]

 今週もお疲れ様でした。イスラエルとハマスの衝突は予断を許さない状況が続きますが、一点、あまり正面からは論じられていないものの無視できないテーマに「イスラエルの核」がありそうです。核兵器の保有に関して「曖昧政策」をとるイスラエルは、2017年時点で80の核弾頭を保有していると推定されます。昨年にはヤイル・ラピド首相(当時)が、「我々の上空にある見えないドームの作戦領域は、防衛能力と攻撃能力、および外国メディアが『他の能力』と称するものの上に築かれている」と語り、核兵器の保有をほのめかした異例の発言として伝わりました。

 今回の紛争でイスラエルが核兵器の使用に踏み切る可能性は低いと見るべきですが、この国家ー非国家間の非対称な「戦争」が核軍備管理と核抑止に対して持つ含意に触れた記事を取り上げます。

 フォーサイト編集部が週末に熟読したい記事、皆様もよろしければご一緒に。

[SITUATION REPORT]U.S. Military Draws a ‘Keep Out’ Sign Around Israel【Jack Detsch、Robbie Gramer/Foreign Policy/10月19日付】

How Israel's Spies Failed—and Why Escalation Could Be Catastrophic【Uri Bar-Joseph、Avner Cohen/Foreign Policy/10月19日付】

「勃発しつつある紛争の、ある大きな側面は、あまり語られていない。それは、イスラエルが、不明確ながら核兵器を保有していることだ。一部のアナリストは、周辺地域への米海軍の強力な配備状況と[大統領、ジョー・]バイデンの現地訪問の狙いは、イスラエルが核戦力の配備を検討したり、現在の状況で何らかの形で核のサーベルをガチャつかせたりする潜在的なリスクを回避することだと推測している」
「イスラエルには選択肢がない」と、[2022年まで米中央軍を率いた元米海兵隊大将、フランク・]マッケンジーは語る。「彼らの抑止のモデルは失敗した。そのモデルは(中略)われわれに逆らうなら、おまえを殺すという考えにもとづいていた。だが、彼ら[イスラエル]は手ひどくやられた。だから今、抑止を再び確立するため、圧倒的な武力を行使せざるをえなくなった」

 米「フォーリン・ポリシー(FP)」誌の週刊ニューズレター「シチュエーション・リポート」(筆者は同誌記者のジャック・ディッチとロビー・グレイマー)は最新10月19日号「イスラエル周辺に『立ち入り禁止』看板を巡らす米軍」で、このような見方を伝えている。

 イスラエル・ハマス紛争における核問題については、同じFP誌サイトに同じ19日付で掲載された「イスラエルのスパイたちはどのようにして失敗したのか そしてエスカレーションはなぜ破滅的になりうるのか」でも分析されている。筆者はイスラエルのハイファ大政治科学大学院教授、ユリ・バル・ジョセフと、米ミドルベリー国際問題研究所教授のアヴナー・コーエンだ。……

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カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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