今週もお疲れ様でした。ハマス・イスラエル大規模衝突は、日を追うごとに国際問題としての性格を強めています。ヒズボラ、あるいはイランが紛争の当事者としてイスラエルへの本格攻撃に踏み切れば、対イスラエル支援の姿勢を鮮明にしているアメリカも連鎖的に軍事行動に踏み切る懸念が高まります。この事態が必然的に招くアメリカの戦略リソースの分散は、アジアにおけるアメリカの抑止力低下に結びつきかねず、それは日本の安全保障に深刻な課題を浮上させます。この点については本日公開した森聡氏(慶應義塾大学法学部教授、戦略構想センター・副センタ―長)の論稿〈内憂外患のアメリカが直面する紛争の時代(上・下)〉が現時点で想定すべきシナリオのすべてを網羅しているように思いますが、本欄では角度を変え、中東情勢沈静化に向けて重要な役割を果たし得るエジプトに注目します。
フォーサイト編集部が週末に熟読したい記事、皆様もよろしければご一緒に。
Egypt in the Cauldron of Gaza【Lisa Anderson/Foreign Affairs/10月25日付】
The World Can't Solve the Israel-Hamas War Without Egypt【Jon B. Alterman、Daniel Byman/Foreign Policy/10月24日付】
「イスラエルがガザ地区への地上侵攻の準備を進めるなか、エジプトが今後数日から数週間の間にどのような対応を取るかに注目が集まっている。エジプト政府は、16年にわたるイスラエルによるガザ封鎖の当事者であり、国境に位置するラファ検問所の出入りを厳しく制限している」――(A)
「イスラエルとハマスが対立を続けるなか、外交的なスポットライトはエジプトに移りつつある。2011年の蜂起とその余波を受けて経済不振に苦しむエジプトは、アラブ政治から疎外される度合いを深めてきた。しかし、ガザに関してエジプトは重要な利害関係を持ち、強い影響力を持つ」――(B)
この(A)と(B)、2件の引用は、米国の外交・安全保障専門誌「フォーリン・アフェアーズ(FA)」と「フォーリン・ポリシー(FP)」のサイトに最近登場した別々の論考の書き出しだ。いずれもイスラエルとハマスの紛争においてエジプトの重要性が高まっていることを前提としているが、では世界は(あるいは米欧は)事態の解決に向けてエジプトと手を組むべきなのか否かという点になると、両者は大きく異なる。……
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