【再掲】世界に「3つの核超大国」が立つ時代――核廃絶と核抑止の二者択一をどう超えるか

執筆者:高橋杉雄 2023年12月28日

「核兵器のない世界」を「究極の目標」とした広島ビジョンへの批判はなぜ生まれるか[平和記念公園で原爆死没者慰霊碑への献花を終えたG7首脳=2023年5月19日](C)時事

米露という「2つの核超大国」を前提としてきた冷戦以来の国際政治の構造は、中国の急速な核軍拡によって根本的な変化を起こしつつある。米中で相互確証破壊が成立したとき、日本にとっては米国の拡大抑止の信頼性の維持・強化にこれまでと違う取り組みが必要となる。そしてその来るべき時代には、核兵器を「絶対悪」と捉える立場と「必要悪」と捉える立場は、核兵器を「悪」と見なさない国々からの挑戦を共に受けることになる。 ※2023年8月11日公開の記事を再掲します

 核による人類絶滅の恐怖と隣り合わせだった冷戦期は、核戦争に至ることなく終結した。しかし核兵器の脅威はそれで消滅したわけではなかった。核テロリズムが警戒されただけではなく、北朝鮮は核・ミサイル開発を着実に進めてきた。そして、2022年2月に勃発したロシア・ウクライナ戦争では、ロシアがしばしば核恫喝を行っており、世界は核兵器が使用されるリスクと改めて向き合っている。

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執筆者プロフィール
高橋杉雄(たかはしすぎお) 1972年生まれ。防衛省防衛研究所防衛政策研究室長。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、ジョージワシントン大学コロンビアンスクール修士課程修了。専門は現代軍事戦略論、日米関係。著書に『現代戦略論―大国間競争時代の安全保障』(並木書房)、『日本人が知っておくべき 自衛隊と国防のこと』(辰巳出版)、『日本で軍事を語るということ 軍事分析入門』(中央公論新社)、共著に『「核の忘却」の終わり: 核兵器復権の時代』(勁草書房)、『新たなミサイル軍拡競争と日本の防衛』(並木書房)、『ウクライナ戦争と激変する国際秩序』(並木書房)、『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか デジタル時代の総力戦』(文春新書)など。
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