丘のように積み上がる小麦の穀粒、市場に溢れるスイカや靴や自転車、仲のよい家族のように労働に勤しむ農民。名匠プイリエフによって1949年に撮られた『クバン・コサック』には、社会主義ソ連がたどりついた共同体の夢があますところなく描かれていた。コルホーズ(集団農場)の苦しい現実がどうあれ、プイリエフはソ連農村の暮らしを美しく演出しきった。この叙事詩を演じた俳優のなかには、かつてレーニンの葬儀で寒さに頬を真っ赤にしていたユーリー少年もいた。内務人民委員ベリヤお抱えのアンサンブルで経験を重ねた彼は、笑顔が魅力的なコサック村の青年をはつらつと演じている1。
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